1. アップルから学ぶユーザビリティ 山中俊治氏
Suicaの自動改札機のデザインを担当。Suicaに限らず電子マネーなど、いまでは常識となっているタッチするという行為を人々にどうデザインの力で認知させるのかという課題を解決する為に、ユーザビリティテストを行い検証を行った。
ユーザビリティテストを行う上で重要なこと
- 開発の初期段階で行う
- 少ない人数でも構わない(回数を多く回すことの方が重要)
- 周到に計画する(ユーザーを疲れさせない)
- クライアントを巻き込む
この仕事が山中さんにとってユーザビリティテストの重要性を認識する転機になったようで、その後の大根おろしの仕事につながったそうです。この話もかなり面白かったのですが発表されてた資料なしに伝えるのは難しいかな?
膨大な大根おろしの刃の試作がなかなか圧巻でした。ポイントは、機械的な規則正しさを廃して、刃の並びにある程度のランダム性を持たせること。そうすると、大根を持ち替えたりおろす方向を変えたりしなくても、最後まで気持よくおろせるものができるそうです。
で、話は変わって山中さんから見たアップル製品の凄さは、「無垢」な塊としてのハードと赤子にもわかるインターフェース。特にハードに関しては、デザインの為に日本メーカーではまず考えられないような高コストなNC切削加工による量産技術を立ち上げたことがスゴイと。
そしてNext Stepとして、次の時代のデザインは生きものらしいデザインが来るのではないか?人間は生きているかどうかに敏感であるので、生命を感じられるもの、そしてコマンドによらないコミュニケーション、など。
2. 最新事例に学ぶユーザーインターフェースの研究 増井俊之氏
増井さんはいまの携帯電話でもはやデファクトとなっている予測漢字変換をソニーPCL時代に考案して、その後アップルに行って、かの有名なフリック入力の漢字変換システムの開発に携わったそうです。
その為か、話しのほとんどが漢字変換システムに関する話だったのですが、面白かったは、いまのスマホの漢字変換システムに全く納得されていないようで、曰く、何故にガラケーと同じようなキー配列や入力システムを採用しているのか?せっかくタッチインターフェースになったのに、新しいチャレンジが何も無いとのこと。
iPhoneの漢字入力に関しても全くお気に召さないご様子(あれ、開発に携わったはずでは?)で、あれを有難がって使っているのは、スティーブ・ジョブスに絶対騙されてるだろうと(笑)。
後は連文節変換なんてものは全く無用の長物で、かな漢字変換というのは本当は簡単で誰でも作れ、自身がRubyで600行程度で書いたかな漢字変換システム(名前失念)とか、Android用に作ったSlimeの紹介とかとか。
そして、増井さんの考えるユーザーI/F開発のタブー
- 素人の意見を聞く
- 多くの意見を聞く
- 古いものを無意味に模倣
- 有能な人が少人数で作る
- シンプル
- 捨てる勇気
- ユニバーサルのデザイン
- 素人の感想は聞くが意見は採用しない
で、増井さんによると、GUIに関しては20年前から全く進化していない。スクロールバーなんてあれが使いやすいとは思わないけど、あれ以上のものを何で誰も思いつかないのか?
ということで、ご自身の活動としてGoldfishというAndroidの実世界GUIのフレームワークの開発をされています。どういうものかは、ここの blogで紹介されている記事をご参照いただくのがわかりやすいかと思います。
3. iCloudとSiriに見るサービスデザイン 奥出直人氏
本題であるはずのSiriに関しては、冒頭にかの有名なナレッジナビゲーターのビデオを数秒紹介して終わり(えーっ?)。
で、後はDesign Thinking(デザイン思考)というメソッドでのプロダクトやサービスデザインの話でした。カルボナーラを誰でも美味しく作れるシステムとか、医療関係のサービス開発の話で、個々の内容は興味深かったのですが、デザイン思考とはなんぞや?というところに関しては、頭が悪いのかあまり理解できませんでした(汗。
基本的な考え方として、どういう課題を解決したいのか?どういう付加価値を提供するのか?(Human Value)というところから入るのですが、そのフェーズでの重要な点は、現場が何に困っているのかを理解すること。
だけど、それを現場に行って実際に見させてもらうことが、そもそも非常に難しいこと何だと(これは多分医療用サービスを携わったことから来る経験談だと思われる)。なので、ユーザーとの信頼関係を築くことがとても重要。
そして、ここでも作ったものをユーザーに実際に使ってもらい、そのフィードバックから何度も作り直したという話を聞きました。
後は、その課題を解決する手段のTechnologyとして、いまのクラウド環境やスマートフォン、タブレット端末などは非常に強力で安価なツールになってきているので、プロトタイプがすぐに作れるからチャレンジしてみたらどうか?
そして、それがある程度成功したら、最終的にはそれをどうBusiness(どこで儲けるのか)に結びつけるのかを考えなければならないので、サービスのデザインが重要(だからデザイン思考なの?)。
そのヒントとして、大量のデータをクラウドのパワーで処理した結果を端末のI/Fの面白さにどう結びつけるのかを考えてみればいいのでは無いか?とのことでした。
とまぁ、思ってた内容とは多少違ったけども、話としては面白くて得るものが多かったセミナーでした。